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 源流から海へ135kmの旅

 占冠村トマムを源流とし、むかわ町で太平洋に注ぐ一級河川「鵡川(むかわ)」。占冠村にはこの鵡川の源流部が流れており、村の集落は鵡川に寄り添うように開かれています。占冠村は面積の94%を森林が占めており、この広大な森林が鵡川を涵養しているのです。しかしながら開拓時代から昭和30年代までの大規模な森林開発により、森の木々は次々と伐り倒され、それに伴って鵡川も水量が減りました。現在の水深は当時の半分とも三分の一とも言われています。これらの林業全盛期には山で伐った木は春先の増水を利用して、流送という形で鵡川を使って下流に運ばれていました。本州からの流送職人や船大工などを含む多くの人が村には溢れ、飲食店や商店は大変繁盛しました。村には遊郭まであったということです。鵡川はアイヌ語で塞がるを意味する「ム・カ」が語源とされているとおり、流域は非常に崩れやすくやわらかな地層でできており、その結果崩れた砂により非常に河口が塞がりやすくなっています。現在でも河口は砂が堆積し、漁業などへの影響を考えてしばしば重機による掘削が行われています。

 また、鵡川の本流には幸いなことに大規模ダムがありません。(支流の双珠別川には発電用ダム、穂別川には農業用ダムがあります)これには昭和34年に占冠村で起こったダム反対運動が大きく関係しています。北海道開発局によって鵡川本流赤岩に建設が予定された「赤岩ダム」は貯水量3億5千万トン、電力9万キロワットを生みだす大規模ダムで、このダムが出来れば占冠村の主要地域を含むほとんどが水没するというものでした。これに対し村民が一丸となって反対運動を起こし、1961年(昭和36年)正式に中止となりました。反対運動によるダム事業中止は大規模多目的ダム事業としては日本初でした。本流にダムのない鵡川では、上流部で生まれた山女魚(ヤマメ)が海に下って大きくなって帰ってくるサクラマスもみられます。昭和30年代までは夏に赤岩で行われる青年団のサクラマス獲りは村の風物詩でした。しかし、中流部の発電用コンクリート堰(現在では壊れて放置)、河口近くの農業用取水堰(頭首工。後付の魚道はある)によって、その姿はほとんど見られなくなってしまいました。

 河口のむかわ町は漁業がさかんで、特にむかわブランドのししゃもは市場で高値で取り引きされる重要な資源です。源流部の森と河口部の海は自然の循環の中で密接な関係があることが近年の研究で明らかになっています。源流部の森から川に落ちる落ち葉は分解されながら海へと運ばれ魚の餌となるプランクトンを養っています。また海から上がる鮭やサクラマスは源流部で産卵を終えて、ヒグマや狐など動物の重要なエサとなり、その栄養分が森を育てるのです。これらの関係の重要性を考えた、むかわ町、むかわ漁協、しむかっぷ村では、毎年合同で源流部への植樹活動を行っています。また近年では「鵡川 森の民・海の民」と銘打った交流が行われており、お互いの町を訪ね交流を深めながら、美しい鵡川の未来を支庁の枠を越えて話し合っています。
● 鵡川 源流から海へ135kmの旅 
2009年10月1日~2日 近自然セミナー+α
  最上流部(鵡川源流・奥トマム)

鵡川源流の森を1時間ほど歩いて、鵡川135kmの源流に来ました。ふつふつと湧いている源流をすくってのどを潤しました。むかわ町では源流の森を育てるために10年前から植樹をしています。その一環としてこの源流の碑も建てられたのです。むかわ町議の小坂さんにその辺りのお話しをしていただきました。
  上流部(落差工・トマム-字占冠間)

鵡川上流部、占冠トンネル近くにある落差工です。どうやらこのすぐ下流にある川の曲がりで道路を崩されないようにエネルギーを緩める効果のために設置されたのではないかということです。であれば、この方式でなくてももっと環境や生態系、そして景観などに配慮した方法もあるのではないでしょうか。
  上流部(サクラマスのホッチャレ・字占冠)

鵡川上流部のある河原で、9月21日に産卵を終えたサクラマスのホッチャレ57cmが見つかりました。目撃情報などはたびたびありましたが、産卵を終えたサクラマスが見つかったのは近年でははじめてです。この出来事は本当に飛び上がるくらいにうれしい出来事でした。

 

上流部(ヤマメ養殖場・字占冠)

こちらは鵡川の支流シム川沿いにあるヤマメの養殖場です。川の新鮮な水が流れ込む養殖場で、すくすくと育っています。最近このヤマメが人気の食材として知られてきています。
  上流部(ヤマメ養殖場近くの高速道路橋脚・字占冠)

養殖場近くの高速道路の橋の下。環境学の専門家からある指摘を受けました。それは高速道路の排水が直接川に流れ込んでいる事。しかも広い範囲の排水がここに集中しているようです。渇水期あとの雨で濃縮された廃棄物は環境に大きな影響を与えます。この支流近くにはヤマメの養殖場もあり、毎年小学校の川遊び授業も行われています。これは協議会として、また市民として、行動して行こうと思います。
  上流部(支流双珠別ダム・双珠別)

鵡川本流にはダムはありませんが、支流に2箇所ダムがあります。村内にある双珠別ダムはそのひとつ。このダムは隣を流れる沙流川から隧道で水を引き込み、発電後はまた長い隧道で戻しています。決して近くはない隣の川との間を隧道で水が行き来しているのは違和感を感じますし、環境的にも問題があると感じます。
  上流部(赤岩青巌峡・赤岩)

村立自然公園「赤岩青巌峡」は、赤や青の巨岩が織りなす独特の景観が魅力で、鵡川流域で唯一切り立った崖の存在するところです。落差が激しく激流や落ち込みが続くことから、日本で3本の指に入るラフティングによる激流下りのポイントとなっています。
  中流部(旧発電所の崩壊した堰・福山-穂別間)

福山-穂別間に放置されている壊れた堰(発電所跡)です。現在川沿いの道路は閉鎖されており、この場所には川を下って行くしかありません。ネイチャーガイドの細谷氏は数年前から鵡川を源流から海まで下るツアーを実施しており、この堰の状況を報告してくれました。
  中流部(穂別ダム・むかわ町穂別)

もうひとつの鵡川支流のダム、穂別ダムです。このダムは完全な農業用のダムで、ここで水をためて、水田のために放水しています。シルトといわれる非常に粒子が細かい土質のため、水が濁ってしまい、下流では放水時期に懸念しているそうです。

 

中流部(穂別合流点・むかわ町穂別)

穂別ダムのある穂別川と鵡川本流の合流点です。左の穂別川からの水は放水期にはあきらかな濁り水で、ここでは2本の川の水がくっきりと分かれて見えるそうです。
  下流部(2つの頭首工・むかわ町)

鵡川河口近くに2つある農業用の頭首工(とうしゅこう)です。穂別ダムで放水した水をこの2つの頭首工から水田へ送っています。後付けで魚道が作られていますが、全然機能していません。その証拠にあがろうにもあがれない鮭が堰の手前でうようよと泳いでいます。(2009年10月2日)サクラマスが上流で見られなくなったのもやはりこの2つの堰が大きな理由の一つのようです。
  河口部(むかわ町)

ここが鵡川135kmの河口です。鵡川はアイヌ語で「塞がる川」という意味。なるほど、河口は砂ですぐに塞がれてしまうそうです。河口すぐ近くにはアイヌの人たちがシシャモを祀っているシシャモカムイノミの祭壇があります。
  むかわ町の名物「シシャモ寿司」です!なんとラッキーなことにむかわを訪れたこの日がシシャモの解禁日でした。透き通ったシシャモは、さばくのにとても手間がかかるそうです。う~ん、うまそ~!(うまかったです。)
  源流の森の民と、河口の海の民は、これから川を通して交流し、互いの地域のことを情報交換しながら美しい鵡川の未来を考えてていきたいと思います。(写真は2009年12月18日占冠村湯の沢温泉での交流会にて)
NPO法人 占冠・村づくり観光協会
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